まだまだ元気な65歳夫婦。手すりをリフォームで付けたほうが良い?
元気でも手すりは設置すべし。その2つの理由とは?
手すりは弱った身体をサポートするためではなく「ケガを予防」するためだからです。
なぜケガを予防しなくてはならないのか
転んでケガをして長期間寝たままの状態が続くと、筋力が落ちて動けなくなり、結果「寝たきり」になる可能性があります。
「ケガの予防」=「寝たきりの予防」です。
寝たきりの危険性
もし、ケガをしてベッドに横になると…
- 1週間で筋肉の20%が衰弱する
- 3週間寝込むと60%が衰弱する
と言われています。また1週間で衰弱した筋肉を取り戻そうとすると、1ヶ月リハビリでかかります。特に高齢者は若い人に比べて回復に時間がかかります。
「転ばぬ先の杖」という諺がありますが、まさに転ばないことが高齢者にとっては重要になります。
高齢になると知らず知らずのうちに身体能力が低下し、転びやすく、ケガをしやすくなります。万が一転倒した時、手すりが身体を支えてくれるようにし、大事に至らないようにします。
高齢になると起きやすい身体の変化
- 視力低下
- バランス能力低下
- 内服薬や低血圧によるめまい
- 筋力低下
このような変化は誰にでも起こりえます。手すりがあれば万が一転んでしまった時、これにつかまることで身体を守ることができます。
手すりはいざという時、身体を支えてくれる安全装置の役割を果たします。
世間一般では「高齢者」と言われる65歳になったものの、まだまだ元気で趣味やスポーツを楽しんでいる方は大勢います。
「手すりなんかなくても不自由はない。でも、子どもたちが心配してくれている…手すりは付けたほうが良いのだろうか?」とお考えの方。もし、手すりがついていないのであれば、リフォームで手すりを付けることをおすすめします。
手すりを付けると効果のある4つの場所とは
手すりがあると転倒予防に効果的な4つの場所
- 玄関
- 階段
- トイレ
- 浴室
それぞれの場所ごとに
「転倒防止に効果のある理由」
「手すりを取り付ける上でのポイント」
などをご説明します。
手すり設置の注意点
今回の手すり設置についての解説は、介護保険非該当(介護保険の対象とならない、健康な身体であるということ)の人の場合の設置方法です。
何らかの障害が身体にある場合は、その人の身体状況により、手すりの設置方法が変わってきます。
転倒防止に効果のある理由
- 玄関には高い段差があり転倒しやすいため。
- 高齢者の身体に負荷がかかりやすい場所です。
手すりを取り付ける上でのポイント
- 設置場所
「玄関の三和土(たたき:靴を脱ぐ土間の部分)と床の境目」
目安は登り降りする時につかみやすい高さ(およそ床から75cm程度)です。 - 手すりのタイプ
「I型(直線型)の手すりを縦に設置する」
- 材質
「木製が一般的です」
暖かみがあり、木目の模様も美しく、デザイン的にも優れているためです。アルミなどの金属は冷たく硬すぎ、握った時の感触が良くないのでおすすめできません。樹脂も良いのですが汚れが付きやすい性質があります。 - サイズ
長さ:通常60~80cmのものが目安
太さ:32mm程度(オススメはディンプルと呼ばれる凸凹がついているタイプ。握りやすい)
転倒防止に効果のある理由
- 姿勢が不安定になりやすい。
- 座った状態から立ち上がるという動作は筋肉に大きな負荷をかけ、転倒しやすい。
手すりを取り付ける上でのポイント
- 設置場所
「便器に座った時の利き腕側の壁」
- 手すりのタイプ
「L字型」
横の手すりは身体を支え、移動を補助します。縦の手すりは身体を立ち上げる時の補助になります。 - 材質
「木製」
金属と異なり冷たくならず、感触が心地よい。 - サイズ
長さ:縦80cm☓横60cm
太さ:32~35mm
転倒防止に効果のある理由
- 階段の昇り降りは身体を支えるため、足腰に強い力がかかり高齢者には負担です。
- 階段は必ず片足立ちになるので、体勢が不安定になります。
- 転ぶと下まで落ちることも考えられ、大ケガになりかねません。
手すりを取り付ける上でのポイント
- 設置場所
「階段の両側が理想的」
・階段の幅が狭くなりすぎる場合
「降りる時の利き腕側」
理由:昇るときより降りる時の方が転倒しやすいため。・U字型の階段の場合
「利き腕に関係なく、外側に設置。」
理由:踏面(ふみづら:足を乗せる面)が中心に行くほど狭くなり、足を踏み外しやすくなるため。 - 設置する高さの目安
「利用者が手を自然におろしたときの、尺骨茎状突起(しゃくこつけいじょうとっき)と呼ばれる、手首に出っ張っている骨の位置を目安にします。」
- 手すりのタイプ
・直線型の手すりを階段の始まりから終点まで、連続して設置します。
理由:途中で途切れると、突然支えがなくなるので、危険なため。・端部(手すりの始まりと終わりの部分)は壁側あるいは下方に折り曲げます。
理由:手すりの端部が真っ直ぐだと、洋服の袖に引っかかってしまい、危険なため - 材質
「木製」
- サイズ
「太さ 35mm程度」
玄関やトイレで使うつかんで使うタイプ(32mm程度)よりも、若干太めにします。階段につける手すりは掴むというよりは体をあずけて移動するイメージで使います。
転倒防止に効果のある理由
- 浴室は段差が多く(入り口、洗い場、湯船)、浴室内の移動は姿勢が不安定になり危険です。
- 床は常に濡れているため、滑りやすく転倒しやすい。
- 裸なので、転ぶと大ケガになりやすい。
手すりを取り付ける上でのポイント
- 設置場所
①浴室の出入り口(洗面室側と浴室側両方)
②洗い場の座った場所の正面(立ち上がる時につかまります)
③洗い場から湯船に入る位置(つかまって身体を安定させます)
④湯船の脇(湯船から立ち上がる時の補助です)
⑤洗い場に移動のために設置。 - 手すりのタイプ
①②③:つかまって移動するためので「縦手すり」が向いています。
④⑤:身体を支えるためなので「横手すり」が向いています。 - 材質
「樹脂製」
浴室内は湿度が高いので、腐食の心配のない樹脂が向いています。樹脂は滑りにくく、感触も柔らかいのでおすすめです。 - サイズ
長さ 縦手すり:600~800mm
横手すり:湯船は600~800mm 移動用については洗い場に合わせます。
高齢者が手すりを付ける時は補助制度を利用しましょう
自治体によっては介護保険非該当でも、申請すれば少ない負担で設置してくれる制度があります。
通常、介護保険を利用しての手すりの設置、段差の解消などは、介護保険認定を受けていないと申請できません。
そこで、介護保険の認定外の元気な高齢者を対象として、寝たきりなどになることを「予防」するための「高齢者自立支援住宅改修給付 予防給付」という制度があります。
高齢者自立支援住宅改修給付 予防給付の条件
- 対象は介護保険非該当の65歳以上の方
- 工事限度額20万円まで。(超過した分は自己負担)
- 利用者負担は1割
- 工事種目 手すりの取付、段差解消、扉の取り替え、便器の様式化
介護保険の住宅改修についてはケアマネージャー(介護支援専門員:高齢者介護のプロフェッショナルです。
介護保険認定を受けると必ず担当のケアマネージャーがついて色々な相談に乗ってくれます。)などから情報を得ることができます。
ところが、ケアマネージャーのつかない介護保険非該当の方は、自立支援住宅改修給付のサービスの存在すら知らないことがあります。
まずは住んでいる自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
一本の手すりが高齢者の未来を変える
高齢者の家庭内事故によるケガなどの発生箇所は「段差のある場所」で起こっています。
高齢者の場合、ケガをすると若い人以上に回復に時間がかかります。手すりが一本ついていることで無用なケガを防ぐことができます。
老後を健康で自立した状態で満喫するためにも、家庭内での転倒対策は大切です。
また、たかが手すりといっても設置には専門的な知識が必要です。
DIY(日曜大工)で手すりを付けるのも可能ですが、万が一「使用中に手すりが取れてしまった」などというトラブルが起こると、かえって大きなケガの原因になってしまいます。
手すりの設置方法が間違っていたり、設置箇所が不適当だったりすると、十分な効果が得られないだけでなく、逆に危険が増すことになってしまいます。
高齢者福祉の制度に精通し、高齢者に快適で安全な暮らしを提案できるノウハウや知識のあるリフォーム会社を見つけることが一番大事なことです。